皆さんは「クレオール言語」というものをご存知でしょうか。例えば全く言葉が通じない地域で商売をしなければいけない場合、あなたならどうしますか?

 

きっと自分の持っているものの名前を必死で教えながら、相手の言葉を単語レベルでできる限り理解する努力をして、商売に関する言葉をきっかけにカタコトで会話を進めていくことになるはずです。そしてそれは相手側の言語と自分のしゃべる言語を織り交ぜた形の会話になることでしょう。

 

そうして商売上での交流をきっかけに特定の地域間で発生した言語が定着し、その地域で独自の発展を遂げたものが「クレオール語」「クレオール言語」と呼ばれるものです。

 

こうして聞くと日本人の私たちには関わりの無いような風に聞こえますが、実は日本に由来したクレオール言語というのも存在します。日本国内ではありませんが、過去に日本の統治下にあった台湾の東部、宜蘭県の山間部に日本語の影響が色濃く残った言語があり、これが「宜蘭クレオール」と名付けられ、今でも研究が進められているのです。

 

違う言語をカタカナで表現するのは難しいですが、例えば以下のような会話が実際に使われています。

「キノ、サムィシナィ(昨日は寒くなかった)」

「アレ、マダオキラナィ(彼はまだ起きていない)」

これは日本語と認識されて使われているのではなく、あくまでの現地のアルタヤ語に交じって使われているらしく、複雑になった日本語は全く理解されないようです。

 

しかし特に物の名前などの名詞や「君」「彼」のような人称代名詞、そして否定辞と呼ばれる「~ない」「~しない」という表現などには日本語に極めて近い発音が今も使われていて、言語研究の分野では日本統治下で貿易をきっかけにした交流によって発生した言語であると認められています。

 

世界でまだ植民地政策が行われていた時代の負の遺産とも考えられがちですが、当時の人たちは政治的な影響とは別に商売上の交流という必要に迫られて、こうした新しい言語を生み出したのだと思います。

 

どちらかが強制したのではなく、生きるためにお互いの知識や文化を融和させた結果の産物なのです。

 

言わば言語のハイブリッドともいえるこの「クレオール言語」ですが、現在でも世界中で30以上が存在すると認められています。

 

また限定された地域のみで発生し細々と存続してきたものが多いこともあり、まだ認識されていないクレオール言語が世界の片隅で埋もれている可能性も十分にあります。

 

こうした昔の人々の交流を言語から感じ取れるというのは実に興味深いことです。