パプアニューギニアはオーストラリアの北にあるニューギニア島の東半分とその周辺にあるビスマルク諸島の島々で構成される海洋国家です。ニューギニア島は6万年ほど前に東南アジアから人類が入り込んだ形跡があり、人類最古と言われる貝殻の貨幣が見つかっているなど、人類史の観点でもなかなか興味深い地域です。

 

その中でも言語文化は複雑を極めていて、なんと600万人ほどの人口に対して一説には800以上の言語が存在していると言われています。16世紀の中ごろにポルトガル人が欧米文化を持ち込むまでは、もともと1,000以上の部族に細分化されていたようで、それぞれが独自の文化集団を作っていました。

 

全く交流が無かったということではないようですが、それぞれが自分たちの文化圏を守って生活していたために、とても多様性に富んだ地域になっていたようです。

 

19世紀中ごろから第二次世界大戦を経て1975年に独立するまではオランダ・ドイツ・イギリス・オーストラリアと様々な国に統治されることになりましたが、その中でも言語が一気に消失することもなく、多くの言語体系が今も残るという点では文化的にはとても珍しく価値のある国だと感じられます。

 

ただしそんなパプアニューギニアにも、言語が異なる多くの人々に共通的に使われているいわゆるクレオール言語(またはピジン言語)が存在します。それが英語をベースにし、現在ではパプアニューギニアの公用語として使われている「トク・ピシン語」です。

 

トク・ピシンはそれ自体が「ピジン言語」という意味で、もともとピジン言語とは共通語として定着する前段階のことを指しますが、すでに公用語としてある程度定着していることから言語学上ではクレオール言語として分類されるのが普通です。

 

現在ではトク・ピシンは120万人ほどが第一言語として、さらに400万人程度が第二言語として使用していて、パプアニューギニアの人々の意思疎通のツールとなっています。

 

トク・ピシンでは例えば「おはよう」は「モーニン」であり「さようなら」は「バイ」、「また会いましょう」は「ルッキン・ユー・ゲン」となり、明らかに英語をベースとしていることが分かります。

 

パプアニューギニアは独立はしているものの国家元首はイギリス国王(女王)という特殊な背景をもつ国で、クレオール言語であるトク・ピシンにもその政治的な影響を感じずにはいられません。

 

しかしこのトク・ピシンがあるおかげで、パプアニューギニアの人々は800にも上る自分たちの固有の言語を失うことなく国として人々が意思疎通を図ることができるわけです。

 

クレオール言語の歴史上の成り立ちとその存在価値を考えることは非常に興味深いものです。